初心者が押さえておきたい、おすすめ香港映画15選!

ジャッキー・チェン

邦画、アメリカ映画、韓国映画……と、各国・地域で数多くの映画が生まれています。しかし、"香港映画"はあまり馴染みがないカテゴリーの一つかもしれません。

ブルース・リー、ジャッキー・チェン、カンフー、マフィア……といったイメージは浮かんでも、具体的な作品名を知らない人は多いのでは?アクションスターの登場するド派手なエンタメ系映画はもちろん、世界的に人気の"香港ノワール"や欲望渦巻く恋愛ものなど、実は様々な魅力を持つ作品が存在するのです!

そんな香港映画、80年代には日本で空前のブームを巻き起こしました(主にアクション映画で)。

この記事では、日本でも人気を博した王道・香港映画から少しマニアックなものまで、初心者におすすめしたい15本をご紹介します。

1.『恋する惑星』【1994年】

斬新な映像美が香港映画のイメージを一新!


恋する惑星

90年代を代表する映像作家ウォン・カーウァイが、2組のカップルのふわふわとした雰囲気の恋愛模様を、オムニバス形式で描いた話題作。

舞台となるのは、香港の無法地帯・九龍の雑居ビル「重慶大厦」。失恋したばかりの警官663号と麻薬密売人の女、663号行きつけの飲食店の新入り店員と恋人とのすれ違いが続く警官223号、それぞれの出会いと別れを軸に物語が展開していきます。

香港映画と言えばカンフー映画やコメディが多い時代に、カラフルかつ臨場感溢れる映像でラブストーリーを描き、新風を巻き起こしました。噂は世界に広まり、日本では無名だった金城武やフェイ・ウォンらの名を一躍有名にし、ロケ地は日本人観光客の名所に!

主演のトニー・レオンと金城の共演のほか、歌手でもあるフェイ・ウォンが歌う挿入歌『夢中人』にも注目です。

2.『花様年華』【2000年】

既婚者同士の切ない恋を描く、詩的なラブストーリー

上述の『恋する惑星』に続いて、ウォン・カーウァイ監督の代表作の一つにして不倫をテーマにした珍しい映画をおすすめします。タイトルの『花様年華』は中国語で「花のように華やかな日々」を指し、日本では「満開の花のように、成熟した女性が一番輝いている」と訳されたのだとか。

1960年代の香港で、禁断の関係に堕ちていく既婚男女に訪れる別れ、想い合いながらもすれ違いを繰り返し、経過する時の流れがつづられます。

主人公のチャウは、香港の短編作家ラウ・イーチョンがモデルで、演じたトニー・レオンは第53回カンヌ国際映画祭男優賞などを受賞。露骨ではない官能的な雰囲気が漂い、退廃的な音楽とメランコリックな映像美が情感を盛り上げる、とても静かな作品です。

チャン夫人役のマギー・チャンが着こなす、色彩豊かなチャイナ・ドレスも見どころ!彼女の役柄から、本作は同監督の作品である『欲望の翼』の続編、『2046』の前編と位置付けられています。

3.『イップ・マン 序章』【2008年】

ブルース・リー唯一の師匠を主人公とした本格カンフー映画


イップ・マン 序章

伝説のスター、ブルース・リーの唯一の師匠として有名な中国武術「詠春拳」の達人イップ・マン(葉問)の壮絶な人生を、ドニー・イェン主演で映画化。

舞台は1930年代、中国広東省佛山。イップ・マンは町一番の武術家として尊敬を集め、家族と平和に暮らしていましたが、1937年に日中戦争が勃発します。佛山を占領した日本軍に全てを奪われ、日本兵に中国武術を教えるよう強要された彼は、中国人と中国武術の誇りを守るため日本軍将校との闘いに身を投じることに。

監督は『SPL/狼よ静かに死ね』のウィルソン・イップで、キャストにはサイモン・ヤム、池内博之らが名を連ねます。サモ・ハン・キンポーがアクション監督を務め、一から詠春拳の稽古に取り組んだドニー・イェンの努力もあり、2009年に第28回香港電影金像奨の最優秀作品賞を受賞。

本作のヒットを機に「イップ・マン」はシリーズ化され、続編の『イップ・マン 葉問』と『イップ・マン 継承』も制作されました。また2019年には、「継承」にて詠春拳の正統争いに敗れ、武術界を去ったチョン・ティンチを主人公としたスピンオフ映画『イップ・マン外伝 マスターZ』が公開。ドニー・イェンも製作に名を連ね、詠春拳を捨てたはずのティンチが、とある犯罪組織に立ち向かう様を描きます。

4.『プロジェクトA』【1983年】

ジャッキー・チェンのデビュー10周年を記念して作られたアクション大作

ジャッキー・チェンデビュー10周年の年に、自ら主演・監督・脚本・武術指導を務め、海賊と警察組織の戦いを描いたコミカル・アクション映画。その他のキャストは、サモ・ハン・キンポー、ユン・ピョウなど。

1900年代、イギリス植民地下の香港の街は、海賊の横暴に悩まされていました。そんな折、ドラゴンら水上警察は、敵対するジャガー隊長率いる陸上警察へ吸収統合されます。海賊に人質に取られたイギリス海軍の提督らを救うため、和解したドラゴンとジャガー、ドラゴンと旧知の仲で、こそ泥のフェイを含む精鋭たちは「A計画」を発動するのです。

ジャッキー映画のお約束「エンディングのNG集」や、大怪我を負ったという「時計台落下シーン」を始め、文字通り"命がけの"アクションに注目!

主題歌「東方的威風」は日本のTV番組のBGMに何度も使用され、長年親しまれてきました。

5.『ドランクモンキー 酔拳』【1978年】

ジャッキー・チェンが日本初お目見え!

『スネーキーモンキー 蛇拳』に続く、若き日のジャッキー・チェンの代表作。清朝時代末期に実在した洪家拳の達人、黄飛鴻(ウォン・フェイフォン)をモデルにしたカンフー映画です。

名門道場の子息なのに、道場門下の悪友と揃って自堕落な日々を送る黄飛鴻を見かねた父は、酔拳の名手"蘇化子"に息子を預けます。カンフーの腕は"そこそこ"だった飛鴻ですが、各所でのトラブルを経て己の未熟さを自覚し、技を習得していくのです。

当時はブルース・リーが主流だった本格カンフー映画に、コメディ要素を上手く取り入れた点と、酔うほど強くなる奥義「酔八拳」のユニークな立ち回りが魅力!

ジャッキーのキャラクター性も好評を博し、1994年に続編『酔拳2』が制作されました。

6.『インファナル・アフェア』【2002年】

ハリウッドでもリメイクされた香港映画界の新旋風!

香港の裏社会を生きるマフィアと、彼らを撲滅させるため奮闘を続ける警察、という香港映画界で最もポピュラーな題材の一つを扱った3部作の第1作目。

同じ18歳の年に、警察に潜入したマフィアの青年とマフィア組織への潜入捜査を命じられた警察官が、とある麻薬取引を巡り互いの存在を知ることになって……。人気俳優トニー・レオンとアンディ・ラウが共演した大ヒット作で、低迷しつつある業界に新旋風を起こしました。

原題の『無間道』の「無間」とは、仏教用語で"永遠に助からない"という意味。スパイという苦難を背負い、孤独な戦いを続ける2人の葛藤も見どころです。

緻密な脚本はハリウッドをも魅了し、レオナルド・ディカプリオ主演のリメイク版『ディパーテッド』は、アカデミー賞作品賞を受賞。日本でも、2012年にTBSとWOWOWの共同制作ドラマ『ダブルフェイス』としてリメイクされたので、知っている人は多いのではないでしょうか?

7.『さらば、わが愛』【1994年】

動乱の時代に翻弄された京劇役者の愛と憎しみ

李碧華(リー・ピクワー)の同名小説を原作に、演じることに全てを捧げた2人の京劇役者の目から、日本統治下の動乱の時代を描く香港・中国合作映画。

1920年代の中国・北京。小豆子は女郎の子であるという理由で京劇の養成所でいじめられるも、先輩の石頭に助けられ、女形の程蝶衣として有名に。石頭に同性愛を向ける小豆子をよそに、彼は段小楼の名で成功を収め、小豆子の憎む"女郎の"菊仙と結婚するのでした。

政治体制や戦争に翻弄された京劇役者たちの波乱の生涯を、愛と憎しみを交えて表現しており、歴史問題を知るという意味でも必見の1本!孤独感漂う切ない展開が涙を誘いますが、京劇の衣装やセットがとても華やかで、アーティスティックな雰囲気の作品に仕上がっています。

1993年には、第46回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルム・ドールを獲得。日本でも2008年に東山紀之主演で舞台化されるなど、世界的に高い評価を受けました。

8.『燃えよドラゴン』【1973年】

世界的ヒットを記録し、ブルース・リー最高傑作とも名高いアクション映画

香港とアメリカの合作で製作され、ブルース・リー、そして空手(カンフー)映画の世界的ブームの火付け役となった記念碑的な作品です。本作の公開直前、ブルース・リーは32歳の若さで死去し、伝説のアクションスターとして語り継がれることとなりました。

主人公リーが少林寺拳法を武器に、要塞化した島で行われる武術トーナメントに内偵として乗り込み、麻薬工場のボス・ハンを倒すべく立ち上がります。

カンフーアクションに加え、復讐や裏切り、陰謀といったサスペンス要素がテンポよく展開される、爽快かつ痛快なアクション映画です。

2018年には、制作元のワーナー・ブラザーズがリメイク版の企画を進めており、監督にはデビッド・リーチが交渉中と報道されました。

9.『ブエノスアイレス』【1997年】

ウォン・カーウァイが同性愛を描いた異色作

『ブエノスアイレス』はデビュー以来、香港の街を撮ってきた鬼才ウォン・カーウァイが国外(アルゼンチン)を舞台に選び、男同士の切ない恋愛を描いた異色の恋愛ドラマ。

舞台は香港の裏側、南米はブエノスアイレス。トニー・レオンとレスリーチャンの共演で、さすらいの旅の中で幾度となく些細な喧嘩と別れを繰り返し、惹かれ合っているのに互いを傷つけることしか出来ない男たちの、刹那的な愛が映し出されていきます。

中華圏の2大スターの共演はもちろん、ウォン・カーウァイが初めて同性愛に取り組み、徹底的に突き放した視点から捉えた手腕も話題に。ゲイカップルの鮮烈な人生模様を、雄大な自然の美しさとBGMの切ないメロディが彩り、なんとも言えない余韻を残すのです。

ウォン・カーウァイ監督は香港の映画監督の中でも、特に名作を多く生み出した監督の一人と言っていいでしょう。日本人からの人気も高い監督ですね。

10.『男たちの挽歌』【1986年】

"香港ノワール"というジャンルを定着させた金字塔


男たちの挽歌

映画界に"香港ノワール"という言葉を生んだ、ジョン・ウー監督の出世作。やや男性向けのハードボイルド映画で、1987年に第6回香港電影金像奨最優秀作品賞を授賞しました。

ニセ札製造を行う香港マフィアの兄と香港警察の刑事となった弟、兄の親友で兄弟分との兄弟愛と友情を、スタイリッシュなガン・アクションと共に描きます。香港映画界の流れを変えた本作はすぐにシリーズ化されており、続編が2本制作されました。

香港ノワールは「フィルム・ノワール」と総称される犯罪映画の中のサブジャンルで、特に「男同士の友情」を描き、激しいアクションを含むのが特徴。

当時日本やアジア各国でも大ヒットし、2011年には韓国版リメイク版『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』が公開されています。

11.『ラヴソング』【1996年】

テレサ・テンの楽曲が印象的な純愛映画

日本でも愛されているテレサ・テンの楽曲をバックに、中国本土から香港へ渡ってきた男女の、10年におよぶ恋模様をつづるラブロマンス映画。

テレサ・テンが好きという共通点から、親交を深めるシウクワンとレイキウ。しかし、シウクワンには故郷に残した恋人がいて、2人は別々の道を歩むことになります。後にシウクワンは恋人と結婚するも、披露宴で偶然レイキウと再会し、気持ちが再燃して……。

レイキウ役のマギー・チャンの演技も評価され、香港アカデミー賞と呼ばれる香港電影金像奨にて、最優秀作品賞、最優秀主演女優賞などを受賞。中国返還前の激動の時代を舞台に、男女の禁断の関係を丁寧かつリアルに描いており、"人の出会いの不思議さ"も感じさせます。

12.『スリ』【2008年】

ジョニー・トー監督の香港愛が炸裂する異色のサスペンス

2008年に第58回ベルリン国際映画祭のコンペティション部門で上映された後、本国・香港で公開された、ジョニー・トー監督作です。日本では『文雀』の題で第9回東京フィルメックスで上映され、2010年にDVDの一般販売が開始、劇場公開はされませんでした。

香港でスリを働く4人組が同じ美女に思いを寄せ、謎多き彼女に手玉に取られる様と、騒動の顛末を面白おかしく映し出すクライムサスペンス。

原題の『Sparrow』は文鳥の意味で、広東語でスリの隠語なのだとか。スリを一つの文化として捉え、返還後の変わりゆく香港の街と失われていくであろう文化を生業にする男たちの姿を、素晴らしいカメラワークで切り取りました。

映画『シェルブールの雨傘』を意識したとされるラストや、香港や街の人々を写した白黒写真が流れる、監督の愛に溢れたエンドクレジットもお見逃しなく!

13.『ザ・ミッション 非情の掟』【2000年】

組織と友情に縛られた男たちのハードボイルド映画

ジョニー・トーがメガホンを取り、組織と友情の間で揺らぐ5人の男たちの運命を描く、『男たちの挽歌』に連なる"香港のノワール"の1作。

香港マフィアのボス、ブンの護衛と彼を襲った敵を割り出すため、堅気に戻った5人の元構成員たちが招集されました。メンバーは得意分野の違いから反発し合いつつ、ついに敵のアジトを突き止めるも、彼らには組織の掟が待ち受けていたのでした。

ガン・アクションの演出も見事で、特に物語中盤のデパートや敵アジトでの銃撃戦、ロイ・チョンが見せた存在感は必見!本作と直接関係はありませんが、 2006年に主演のアンソニー・ウォン、フランシス・ンら主要キャストが再集結し、『エグザイル/絆』が制作されました。

14.『紅夢』【1991年】

鮮烈な赤に彩られた女たちの激しくも妖しい情念のドラマ

蘇童(スー・トン)の小説『妻妾成群』を、目に眩しいほどの赤の色彩美を追求し、"色彩の魔術師"の異名を持つチャン・イーモウ監督が映画化しました。

物語の舞台は、1920年代の中国。大富豪の第4夫人となった少女スンリェンが、主人の絶対的な権力に支配された屋敷で、女の策略と裏切りに飲まれる様を描きます。主人の寵愛を赤提灯に例え、封建的な社会における女の価値、存在意義を観るものに突きつけるだけでなく、全編を覆う真紅と音の演出が恐怖を駆り立てるのです……。

中国版『大奥』とも言える本作は、1987年に第44回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しました。

はっきりしない主人の顔、計算された映像美による愛憎劇は、もはやホラー映画!主演のコン・リーの精神が崩壊していく演技は凄まじく、惨殺シーンもあるので注意ください。

15.『メイド・イン・ホンコン』【1997年】

閉塞感や不安に苛まれる若者たちの姿を描いた青春ドラマ

中国返還に揺れる香港を舞台に、社会の底辺で生きる若者たちの青春を描き社会現象となった、フルーツ・チャン監督の「返還3部作」の1作目。

1997年、中国返還が迫る香港。借金取りの兄貴分を手伝う青年チャウと弟分のロンは、取り立てに行った公団でペンという名の少女と出会うことに。飛び降り自殺した女子学生の遺書をきっかけに、3人には奇妙な絆が芽生え、チャウはペンに恋心を抱きますが……。

キャストは主演のサム・リーをはじめ、本作がスクリーンデビューとなったネイキー・イム、ウェンバース・リー、エミィ・タンなど。ジャッキー映画の娯楽性とも、ウォン・カーウァイらのアーティスト性とも違う青春ドラマは、香港映画界に驚きをもって迎えられたようです。

日本では1999年に公開され、2018年に4Kレストア・デジタルリマスター版が劇場公開されました。

カンフーだけじゃない!新たな香港映画ブームは起こるのか?

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押さえておきたいおすすめ香港映画15選をご紹介しました!ジャッキー・チェンやブルース・リー、ジョン・ウー監督らは日本でも知名度がありますね。

一覧にすると、中国返還などの歴史問題と絡めた作品が多く、香港ノワールのように裏社会の組織が登場するのも香港映画の特徴です。日本では最盛期の80年代と比べ、現在の人気はやや下火になっている印象ですが、2018年に日本公開された『宵闇真珠(邦題)』にオダギリジョーが主演するなど、実は日本人俳優の出演も珍しくありません。

もし「カンフー映画のイメージから敬遠していた」という人がいたら、サスペンスや恋愛ものも豊富なので、ぜひ香港映画の世界観を覗いてみてください!

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